「できない」を「できる」に変えられるので。
株式会社でぃぐにてぃ 訪問介護員
倉田 歩
理学療法士の夢からの変化。「その人らしい人生」を支える訪問介護に魅力を感じて
キャリア
倉田 歩
北海道医療大学リハビリテーション科学部理学療法学科を卒業 ↓ 新卒で株式会社でぃぐにてぃ
1きっかけは、大学時代の地域活動サークル
学生のときに野球をやっていて、肘を怪我したことがありました。病院に通い、理学療法士の方に怪我の治療をしてもらったことが鮮明に記憶に残っていて、私も将来はスポーツ選手のケアをしたいと理学療法士を目指し、リハビリについて学べる医療大学に進学をしました。
将来の夢が理学療法士から介護職に変化したのは、大学の先輩や同級生に誘われて参加した「地域活動サークル」がきっかけ。
このサークルでは、大学周辺に住む高齢者や障がい者のご自宅を訪問し、一緒にお茶を飲んだり、話を聞いたりして、同じ地域に関わる者・住む者同士交流を深めるという活動をしていました。ご自宅に訪問した際にお話を聞くと、家族とのつながりやご近所付き合いがなく孤独を感じている方が少なからずいました。
その当時、サークル活動と並行しながら有料老人ホームでアルバイトもしていました。時間や業務に追われ、一人ひとりの要望に上手に対応できない自分に対して、葛藤を抱えながら働いていたんです。その一方で、地域活動サークルのように、ご自宅に訪問して丁寧に関係性を築きながら「その人らしさ」をそばで見られる訪問介護の魅力にも気付いていました。
もっと一人ひとりの生活に寄り添いながら、食べることや寝ることといった、人間の根本的な部分を支えられる仕事がしたいと思い、訪問介護の道に進みたいという思いが芽生えました。
2人を支える素晴らしい仕事。周囲の声に自信が持てた
私は理学療法士になるために、医療大学の理学療法学科に進んだので「理学療法士にならない」という選択を両親や友人に話すのは、とても勇気がいることだったんです。
いざ就職先を決めるタイミングが訪れたとき、両親に「訪問介護の道に進みたい」と素直に伝えました。反対されるかと思いきや、「人の生活を支えられる仕事に就くことは素晴らしいことだから、自分で選んだ道に自信を持って進んだら良いと思うよ」と心から応援してくれました。
また、熱心にサークル活動に取り組んでいたこともあり、理学療法士ではなく、介護職に興味があることを、自分の口から話す前から、周りの友人たちは気付いていました。「訪問介護の道に進むことにした」と伝えると、「倉田くんらしいね。きっと大丈夫だから、頑張ってね」と言ってくれる人がたくさんいました。
最初は、自分で選んだ道にも関わらず、果たしてそれが正解なのか不安がありましたが、両親や友人など私にとって大切な人たちがその不安を取り除いてくれたことで、その声に背中を押され、自信を持って訪問介護員として、就職することができました。
3”できない”ではなく、”したい”気持ちを一緒に考える
訪問介護員としてお客様のご自宅に訪問し、食事や入浴の介助、お出かけや買い物の際の移動支援、訪問記録を残す事務作業などを行っています。介助を担当するお客様は、ご高齢の方や子どもまでさまざま。
入社してしばらく経ったころ、障がいのある中学生の男の子を担当していました。訪問する度に「自分でスプーンを持ってお味噌汁が飲みたい」という男の子の思いに対して「それはできないよ」と最初から否定をしていました。ご家族もいる中で不穏な空気が流れ、私自身もストレスに。
どうしたらいいのかと悩んでいたときに思い出したのは、入社直後の研修で立てた「お客様の『~がしたい』を引き出す」という目標でした。最初から「それはできない」と否定して全て介助するのではなく、どうしたらできるのか一緒に考えて工夫した結果、少しの介助で、お味噌汁を飲むことができました。その子は「自分で食べると本当においしい!」と今までに見たことがない笑顔を見せてくれたんです。
介助のマニュアルはもちろんありますが、現場に出ればその人に合わせて、臨機応変に対応しなければいけないのがこの仕事の大変なところ。ですが、介護職の工夫次第でその人の日常生活に彩りを与えられ、笑顔が見られるやりがいのある仕事です。
壁にぶつかったときは、この出来事を思い出し、初心に帰るように心掛けています。
4お客様も介護職も、自分らしく生き生きと
お客様の日常生活の支援をルーティンと捉えてしまうと、それは介護ではなく単純作業になります。私たちの生活は毎日同じように見えて、実は流動的なもの。日々の小さな変化に気付けるように常にアンテナを張り、普段とは違った要望にも柔軟に対応できる職員になりたいと思っています。訪問介護は、その人らしさを理解しながら、自分ができることを全力でやる、シンプルな仕事。決して派手でも楽な仕事でもありません。でも実は、このシンプルなことこそが、自分の家族や仲間にも通じる大切なことではないかと思っています。
また、現場経験を積む中で、訪問介護は基本的に一人で訪問して対応することから、どうしても孤独になりやすく、モチベーションを維持し続けるのも難しいことに気付きました。
自分自身の経験からも、後輩とはなるべく対話する時間を作っています。お客様のご自宅を訪問したときの出来事を共有したり、今の思いを話したりして、悩みをため込まないように声掛けを意識しています。
入社して2年目。まだまだ若手ではありますが、今後はこうした対話を通して、一緒に働く職員が生き生きと自分らしく働ける環境づくりに力を入れていきたいです。また、北海道から上京した自分にとって、都内で暮らす上で居住支援特別手当を支給していただいているのも、安心して働くことができる理由の一つだと思います。
今後の現場における目標は、地域と関わりがないお客様が多いので、大学時代のサークル活動のような、お客様と地域をつなげて気軽に交流を持てる、「地域福祉」の取り組みも将来的には行っていきたいですね。そのためにも、今は目の前のお客様一人ひとりとしっかり向き合っていきたいです。