アートと子どもに関われるのが保育士だったから

まちの保育園 吉祥寺 保育士 副主任

今村 千咲

一度は離れたけれど、再び保育士に。“子ども”というキーワードが私の軸

キャリア

今村 千咲

京都芸術大学 子ども芸術学科 卒業 ↓ 新卒から2年間、社会福祉法人立の保育園に勤務 ↓ 食に興味が湧き、調理師免許取得のために専門学校に社会人入学 ↓ 「調理師」の募集を見て、2014年にまちの保育園 吉祥寺に入社 ↓ 育休を経て、現在は時短勤務で副主任も勤める

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妹のお世話をしていたことが、きっかけ。“子ども”がキーワードかも?

保育士の仕事を選んだのは、私の中に“子ども”という気になる存在がずっとあったからです。そのきっかけは、幼い頃に妹のお世話をしていたことでした。私と妹は、7歳離れています。生まれたときからおままごと感覚で、妹にミルクやご飯をあげたり、おんぶをしたり、一緒に遊んだり、妹の面倒を見るのが面白く自然とお世話をしていました。

大学の進路を決めるとき、当時ものづくりや美術に興味があった私は、美術大学や芸術大学への進学を目指していました。大学をどこにしようか、学科をどこにしようかと迷っていると、ちょうど京都芸術大学に「子ども芸術学科」が新設されることを知りました。直感で、「ここで学びたい!」と感じたことを覚えています。興味のあるアートと子ども、どちらも学べて保育士資格の取得もできるため、迷わず進学を決めました。

この頃からなんとなく、「私の軸には“子ども”がキーワードとしてあるのかもしれない」と思っていましたが、まだ断言できるほど強い気持ちではなかったため、保育士や幼稚園教諭といった進路は考えていませんでした。

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アートを学び、食を学び、自分が得たことを子どもたちに還元する

アートと子どもに関わる仕事で就職活動を始めると、理想を一番叶えられるのは保育士だと分かり、結果的に新卒で社会福祉法人が運営する保育園に入職しました。それまで保育士という仕事を考えていなかったのは、「保育士」と言われてイメージする姿と自分がリンクしていなかったのが大きな理由です。自分の中には“子ども”というキーワードがあり子どもが好きだけど、一方で人前に立って話をしたり、ピアノを弾いて歌ったりすることは得意ではない。そんな私が保育士になるイメージが、なかなかできませんでした。

2年間保育士として働いてみたものの、やっぱりどこか違和感を感じる自分がいました。改めて「自分は何をしたいのか」と考え直したとき、保育をする中で「子どもの豊かな心を育むには、アートや食が栄養になる」と感じたことを受けて、一度現場を離れることを決意。そして調理専門学校に通い直し、調理師免許を取得しました。次の就職先を探していたとき、自然と「子どもがいる場所で働きたい」「自分の学んだことを子どもたちに還元したい」、その思いがあることに気がつきました。このときようやく「“子ども”が私のキーワードなんだ」と自覚したんです。

そんなタイミングで、保育園の調理師募集を見つけました。それが今勤務している「まちの保育園 吉祥寺」の求人でした。採用面談で私の想いを伝えてみると「今村さんのやりたいことは、保育でも叶えられるよ。保育士はどうかな?」と打診を受け、それならと再び保育士として働き始めました。

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家庭、保育者、地域で、子どもたちを支える保育スタイル

「まちの保育園 吉祥寺」で勤務し、気がつくと10年が経ちました。当園は、こども主体のまちぐるみの保育を理念としており、保育の場をまちづくりの拠点として位置づけ、豊かな社会づくりを目指しています。北イタリアで生まれた「レッジョ・エミリア・アプローチ」という教育方法を学びながら、地域コミュニティの中にいる一市民として子どもを尊重し、子どもが生まれながらにもつ創造性や、子どもが過ごす“いま”に焦点を当てた保育を実践しているのが特徴です。

子どもたちを取り巻く環境には、ご家庭があり、私たち保育者がいて、そして地域の方々もいます。子どもと大人、園と社会、それぞれ役割や違いがあることを認識したうえで、明確に分けないことを私たちは大切にしています。

例えば、保護者から地域の方々が自主的に行っているクリーン活動を教えてもらい、保育園に来てもらい、一緒に生ごみから土をつくる活動をしたことがあります。自分たちで造った土で野菜を育て、給食で食べたり、子どもたちと料理を作って食べたりしました。保護者とのコミュニケーションの中で出た話から、実際に地域の方と協働し子どもたちに食育に携わる。このようなやり取りができるのは、当園ならではだと感じています。

他にも、子どもたちが「海」に興味を示していたときは、ちょうどご縁があった方々と保護者の方々の協力を得て、海へ行ったこともあります。子どもたちを主体に食育活動やアトリエでの表現活動ができ、私がこれまで学んできたことが生かせている実感がやりがいに繋がっています。

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子どもたちの尊い時間に携われるのが、保育士として嬉しい

一度は保育士を離れたものの「やっぱり子どもに関わりたい」と思い、どうしてそれほどまでに私は“子ども”というキーワードに心惹かれるのか。考えてみると、子どもという存在がすごく面白いからだと思います。かつて、私自身も子どもだったはずなのに、そのときの感覚をどこかに忘れて大人になっています。子どもたちと一緒に過ごしていると、大人では気がつかない、見落としてしまいそうなことにも興味を持ち、想像を膨らませているのがよく分かるんですよね。

子どもは、興味のあるものをじっくり長い時間をかけて見つめたり触ってみたり、自分なりに表現しようとします。大人だと当たり前の答えがあったとしても、子どもたちが答えに出会うその瞬間、その時間はとてもかけがえのないもの。昔は私もこうだったけど今は忘れてしまっているその感覚が、子どもたちと一緒にいると自分に還ってくるような気がする気がするし、保護者や保育者と一緒に考え共感できることがとても幸せです。

今は、産休・育休を経て時短勤務で副主任をしています。先生たちのシフト調整や、クラスを持たずに必要なところの保育のサポートをするのが仕事です。私がこれから力を入れていきたいと思っているのが、「素材」の研究です。数年前から、園全体で既製品の玩具や色を見直し、身近にある水や砂、土粘土、自然物、紙、光、描画材など素材そのものを取り入れるようにしています。遊び方も使い方も決まっていない素材が、子どもたちにどのように作用するのか、素材との出会い方や刺激されるような素材の組み合わせなど、職員と一緒に考えているところです。やっぱり私は子どもが好きで、今では子どもたちと一緒にいられる保育士という仕事を誇りに思っています。

「できない」を「できる」に変えられるので。

株式会社でぃぐにてぃ 訪問介護員

倉田 歩

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