まずは会社の紹介と自己紹介をお願いします。
はじめまして。事務局長の笠野と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
私はもともと介護職として現場に立ち、相談員や副施設長を経て、現在は法人全体の運営に携わっています。
社会福祉法人 東京聖労院は、東京都清瀬市に本部を置く、創立97年の歴史ある福祉法人です。
現在では、高齢者施設を5拠点展開しており、港区では高齢者施設と児童施設の複合施設の指定管理者として管理運営を行っています。その後、港区と北区の2エリアで児童施設の運営も始まり、高齢者福祉と児童福祉の両方に力を入れています。
高齢者と児童が併設された施設では、双方に良い影響があり、特に普段あまり話されないご利用者の方が、子ども達の訪問をきっかけに笑顔になり、たくさん話してくださる場面も見られます。
法人全体では、現在700名以上の職員が働いています。清瀬の施設から始まり、当初は50名ほどだった職員数も、今では大きく成長しました。私たちも現場からスタートし、今は事務局として「働きやすい職場づくり」に取り組んでいます。だからこそ、現場の声を大切にした運営ができていると感じています。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
働きやすい福祉の職場宣言事業に参加したきっかけを教えてください。
採用活動を進める中で、“職員満足なくして利用者満足なし”という法人の理念に共感してくださる求職者が増えてきました。一方で、私たちの取組を十分に伝えきれていないという課題も感じていました。
「何をどう伝えればいいのか」「どんなツールがあるのか」と模索していたときに、この宣言制度の存在を知り、参加を決めました。
最初は「難しそう」「うちにはまだ早いかも」と感じていましたが、ガイドラインをよく見てみると、すでに日常的に取り組んでいることが多く含まれていて、「これならできるかもしれない」と思えたんです。
実際に申請に取り組んでみると、これまでの活動を文章にまとめて“見える化”することで、法人としての強みや課題が明確になりました。
また、宣言を通じて「他の法人と比べて、自分たちの取組はどのくらいのレベルなのか」を客観的に知ることができたのも、大きな収穫でした。
それが職員のモチベーションにもつながり、「自分たちの職場って、やっぱりいいところなんだ」と感じるきっかけにもなっています。
印象的だったのは、退職後に「やっぱりうちの職場が良かった」と戻ってきてくれる職員が少なくないことです。
働きやすさが“当たり前”になっているからこそ、外に出て初めてその良さに気づく方も多いのだと思います。
自分たちにとっては普通のことでも、実は他ではそうではないこともある。
だからこそ、ちゃんと“見える形”にして伝えることが大事なんだと、改めて感じました。
宣言事業を通じて、特に力を入れた取組や成果を教えてください。
宣言取得後、まず取り組んだのがホームページの更新でした。法人の理念や取組がしっかり伝わるように構成を見直し、「働きやすい福祉の職場宣言」の公表通知書を掲載。トップページにはバナーも設置し、訪れた方の目に留まりやすいよう工夫しました。
実際に、求職者との面接では「ホームページを見て、理念に共感しました」「“職員満足なくして利用者満足なし”という言葉が印象に残りました」といった声をいただくことが増えました。職員からも「自分の職場が評価されていることが嬉しい」といった反応があり、“伝える”ことの大切さを改めて実感しています。
私たちは、もともと職員が働きやすい環境づくりに力を入れてきましたが、それを外に向けてしっかり伝えることができていなかったのが、以前からの課題でした。宣言制度をきっかけに、取組を“見える化”することで、法人の強みや魅力を整理し、発信できるようになったことは大きな成果だと感じています。
昔は、“お客様第一”が企業理念として当たり前だった時代もあったと思います。でも、私たちはずっと“職員満足なくして利用者満足なし”という考え方を大切にしてきました。
その想いが、今ではホームページを通じて外にも伝わり、共感を呼ぶきっかけになっています。
宣言事業の公表通知書を職員や利用者様やそのご家族からも良く見える位置に掲載している。
ガイドライン項目9『仕事の成果・取組状況等に対する評価を実施している』こちらの取組について教えてください。
職員のがんばりをきちんと評価し、それに応じた処遇につなげていく――これは、多くの法人が課題として感じているテーマだと思います。
当法人では、平成17年頃から独自の人事考課制度を少しずつ整えてきました。
特徴的なのは、各事業所から選ばれた「人事考課リーダー」が中心となり、制度の見直しを続けている点です。
現場の声を吸い上げながら、法人の考えとすり合わせて、より納得感のある評価制度を目指しています。
制度では、職員が自分で目標を立て、その進捗を中間面談などで確認しながら進めていくスタイルを採用しています。「自分の成長を自分で確認できる」という実感が持てる仕組みです。
また、評価のばらつきを防ぐために、「評価できる職員像」「評価が難しい職員像」を現場から出し合い、事例集としてまとめています。これにより、評価者による判断の差をできるだけ減らし、誰が評価しても一定の基準で判断できるようにしています。法人が求める職員像と現場が求める職員像をリンクさせることで、働き方の方向性が明確になり、評価される職員が増えていく。それが、働きやすい職場づくりにもつながっていると感じています。
ガイドライン項目10『評価に応じて処遇改善する仕組みを整備している』についても詳しく教えてください。
評価制度とセットで大切にしているのが、処遇改善です。東京聖労院では、長期的には「キャリアパス要件」、短期的には「人事考課の結果」に応じて処遇を決定しています。特に注目していただきたいのは、一般職でも最上級評価(クラス3)を得た職員に対して、事業実績に応じた手当を支給している点です。
これは役職がなくても、他の職員をリードできるようなスキルや姿勢を持つ職員を評価し、支給されるものです。
また、こうした制度を支えているのが、日々のコミュニケーションです。「評価面談のときだけ話すのではなく、日頃からの対話が大事なんです」これは制度を運用するうえで、私たちがとても大切にしている考え方です。何を見て評価されているのか、どこを伸ばせばいいのか――
職員が安心して働き、成長していくためには、日々のやりとりの中で信頼関係を築いていくことが欠かせません。
制度そのものだけでなく、それを支える“人と人との関係性”を大切にしていることが、私たちの評価制度の強みだと思っています。
手書きの会社の理念も昔から施設の入り口に掲示されている。
働きやすい職場としての会社の魅力についても、ぜひ教えてください。
東京聖労院の魅力は、制度の充実だけでなく、それを自然に活用できる“空気感”にあると思います。
まず、年間公休は120日以上。有給休暇は入職日に全日付与され、取得率は70%以上。有給と合わせると、年間130日以上休んでいる職員も多くいます。介護業界では「連休が取りにくい」と言われがちですが、当法人では希望休を申請できる仕組みがあり、旅行や帰省、リフレッシュのための連休も取りやすくなっています。
さらに、子どもの行事に合わせて有給を使わずに休める柔軟さもあります。運動会や入学式など、家族の大切な時間をしっかり確保できるよう配慮しています。子育て中でない職員にも配慮があり、「推し活」や趣味のイベントなど、個人の大切な時間も尊重されています。理由を問わず希望休を取ることができるのも、働きやすさの一つです。
育成や定着支援にも力を入れており、新任・中堅・指導職・管理職といった階層別研修に加え、希望者には海外研修の機会もあります。これまでにフィンランドやオーストラリアで学び、視野を広げた職員も多くいます。
海外研修では、参加者が自らプレゼンを行い、帰国後には学びを法人内で共有。たとえば、オーストラリアで学んだ「ダイバージョナルセラピー(多様性を活かしたケア)」は、現在複数の施設で実践されています。
また、分野や施設を超えたグループワークも活発です。高齢・児童の分野をまたいで意見交換をしたり、同じ母国を持つ外国人職員同士で交流できる場も設けています。現在、ベトナム・ミャンマー・カンボジアなど、3カ国から10名の外国人職員が在籍しており、実務者研修や初任者研修の勤務時間内受講支援など、キャリアアップを後押しする体制も整っています。
「職員が安心して働けることが、利用者へのより良い支援につながる」そんな想いが、育成や定着支援の一つひとつに込められています。
最後に宣言を検討している事業所へのメッセージをお願いいたします!
福祉業界全体を見ても、ここ数年で“働きやすさ”は大きく進化しています。
年間120日以上の休み、育児や推し活にも対応できる柔軟な休暇制度、そして国家資格を持っていれば初年度から月額30万円を超えるケースもあるなど、待遇面でも大きな変化が起きています。「福祉の仕事=大変で休めない」というイメージは、もはや過去のものかもしれません。今は、やりがいと働きやすさの両立ができる時代です。
私たちも、これまでの取組を宣言事業の申請を通じて整理することで、良い部分が“見える化”され、同時に不足している部分も明確になりました。それが、今後の課題や目標の設定につながったと感じています。
整理された内容は、求職者へのアピールポイントにもなり、今後さらに発信していくべき部分も見えてきました。
こうした気づきを得られたことは、宣言事業の大きな意義だと思います。
様々な気づきが得られる制度ですので、ぜひ多くの事業所の皆さまにもチャレンジしていただきたいと思います。
東京聖労院では「四恩報謝」(天地、父母、国、衆生の恩に報い、感謝するこころ)を理念としている。