まずは会社の紹介と自己紹介をお願いします。
私は以前、IT企業に勤めておりましたが、母の死をきっかけに介護の世界へ転身しました。ヘルパーとして働き、サービス提供責任者も務める中で、働く人と利用者さん、どちらも大切にできる職場をつくりたいという想いが強まり、2011年に在宅介護サービスの会社を立ち上げました。
その後も、自分自身の経験や仕事を通じた多くの方々との出会いを通じて、高齢者の方だけでなく、世代やライフスタイルによって、さまざまな困難があることを実感しました。そうした気づきから、介護だけにとどまらず、障がいのある方や子育て中の方、そのお子さんなど、幅広い世代の方の暮らしを支えられるよう、少しずつ事業の領域を広げてきました。
株式会社カラーズは、「人を大切にしていきたい」という想いを軸に、私自身や現場スタッフが感じた生活のニーズや地域の声をもとに、事業を展開してきた会社です。
宣言事業に参加されたきっかけについて教えて下さい。
もともと職員が働きやすい環境づくりには力を入れてきたので、宣言事業を通してそれを“見える化”できるのは良いなと感じました。それが結果的に採用にもつながればという思いもありました。
働きやすい職場づくりのために、具体的にはどんな取組をされたのでしょうか?
社員の職場環境がより良いものになるよう、これまでも様々な施策に取り組んできましたが、その中でも「人事評価制度」の整備には特に力をいれて取り組みました。最初は汎用的な人事評価シートを使っていたのですが、当社の業務にはしっくり来ませんでした。そこで社内でプロジェクトを立ち上げて、自分たちの手で制度を作り直しました。
評価の柱は「行動評価・能力評価・職務評価」の3つ。部署ごとの業務に合わせて内容を見直し、業務と評価の関係性がわかりやすい仕組みにしました。
制度づくりには時間も労力もかかりました。半年かけて管理職とミーティングを重ね、毎月議論を続けました。
こうして作った人事評価制度ですが、一度作って終わりではありません。業務や状況の変化に合わせて、制度もアップデートが必要です。手間はかかりますが、スタッフのやる気に直結する大事な部分です。評価する側のマネージャーにも、制度の意義をしっかり理解してもらうようにしています。私自身、会社員時代に「正しく評価されるかどうか」が働く意欲に大きく関わると感じていたので、経営者として覚悟を持って取り組んでいます。
「東京城南BASE.」という取組についてぜひ詳しく教えていただけますか。
介護・福祉の事業所は共通する課題が多くあります。少子高齢化や人口減少が進む中で、「競争」ではなく「協働」が必要だと感じるようになりました。
そんな思いから生まれたのが「東京城南BASE.」です。これは、大田区・品川区など東京都内の城南エリアにある4つの介護・福祉事業者が集まり、経営課題に共に取り組むプラットフォームです。
一社だけでは難しいことも、4社で連携することで可能性が広がります。たとえば採用活動では、共同で採用イベントに出展したり、ハローワークの協力を得て4社合同でのツアー型見学会を実施するなど、求職者に事業所の魅力を伝える機会も増えています。また、毎月の法定研修も合同で実施することで一社一社の負担を減らすことができ、各社の事例を持ち寄ってより質の高い研修内容にすることもできます。また、一社ではなかなか実施が難しい新入社員研修や階層別研修、介護技術研修などの研修体系も合同で構築を進めています。
福利厚生の面でも、4社合同での交流会や意見交換会を実施し、共同で地域イベントに出展するなど取組が広がってきております。
東京城南BASE.は「ゆるやかなグループ会社」のようなイメージです。それぞれが独立した会社でありながら、協力し合える関係性が魅力です。
事業所の横にある、子どもたちがさまざまな野菜を育てている畑。
地域や社会とのつながりも大切にされていると伺いました。どのような活動をされていますか?
私たちは、地域とのつながりをとても大切にしています。たとえば子どもたちに向けては、NPO法人ふるさとファーマーズさんという不耕起栽培※に取り組む法人の協力を得て、畑を使った食育活動を行っています。自分たちで収穫した野菜を使い、先日はカレーを作りました。『食べること』を通して、子どもたちが食について考えたり、興味を持つきっかけになっています。
車いすを利用する方の外出をもっと気軽にしたいという思いから、大田区の町工場の方々と協力してオリジナルの車椅子COLORS®を開発しました。その車椅子を使って、区内のスポットを巡るツアーを昨年2回開催しました。池上本門寺や池上梅園を巡るコース、羽田空港や穴守稲荷神社を訪れるコースなどを企画し、「行きたかった場所に行けてうれしい」といった声もいただきました。
区内のある小学校では、私たちの車椅子を題材にした福祉授業も毎年開催しています。また、関連会社である一般社団法人大田区支援ネットワークでは、「ホームスタート」という育児で孤立しがちなご家庭にボランティアを派遣し、子育て世帯を支援する事業を実施しています。介護や子育てで悩む方が、少しでも安心して暮らせるよう、地域に価値あるサービスを届けたいと考えています。
こうした活動を続ける理由は、「未来のため」です。次の世代を担う子どもたちが少しでも生きやすい未来につながるような取組を続けていきたい。それが、地域や社員との活動の原動力になっています。
福祉業界に興味を持っている求職者の方に向けてカラーズさんの魅力を教えてください。
カラーズの一番の魅力は、スタッフ一人ひとりの「やりたいこと」を大切にし、挑戦を応援する社風です。
働き方もとても柔軟です。子育て中のママ、仕事と介護を両立している方など、多様な働き方が尊重されています。在宅勤務や時間単位での有給取得、フレックス制度、短時間正社員制度なども整っていて、育児・介護休業の取得率は100%。退職金や確定拠出年金制度もあり、安心して働ける環境です。
社内には「少しでも良くしていこう」という前向きな気持ちが根付いています。日々のケアや業務の質にこだわり、「できない」ではなく「どうしたらできるか」を考える姿勢が大切にされています。そんな思いやりのある行動が自然にできるスタッフが多く、私自身とても誇りに思っています。
日常の中でのちょっとした交流も大切にしていて、「ポジティブボックス」という取組では、スタッフ同士が感謝や気づきを気軽に伝え合える仕組みがあります。「いつも丁寧に対応してくれてありがとう」「名もなき家事的なサポートに助けられています」など、日々の小さな貢献を見逃さず、言葉にして伝える文化が根付いています。
社員の健康管理の一環として事業所には健康セルフチェックコーナーがある。
最後に宣言を検討している事業所へのメッセージをお願いします!
宣言事業のガイドラインにあるひとつひとつの項目は、働きやすい職場を作るうえで、どれも本当に大切なことばかりだと思います。ですが、全部を完璧にやろうと構える必要はなく、まずは他の会社の事例を参考にして真似してみるところからでも十分だと思います。大切なのは、少しずつでも取り組んでみること。続けていくうちに、必ずその効果を実感できるようになります。
私自身、採用と同じくらい「定着」が重要だと考えています。せっかく採用しても、続けてもらえなければ意味がありません。だからこそ、働く人がやりがいや幸せを感じながら働ける環境づくりが必要で、その点においてこのガイドラインは非常に役立ちます。体系的に整理されているので、何をどう進めればよいかがわかりやすいです。
もちろん、一朝一夕に成果が出るものではありませんし、目の前の業務で精一杯という方も多いと思います。それでも、社員や組織づくりを後回しにしてはいけません。すぐに目に見える成果がなくても、地域との関わりを続けてきたように、種をまき続ければ必ず花が咲く時が来ます。実際、地域の皆様からは今では色々な相談をいただくこともあり、少し困るくらい(笑)。でも、それも続けてきたからこそ生まれた結果だと思います。

