まずは自己紹介と法人の紹介をお願いします。
東京都同胞援護会は、乳児から高齢者まで、幅広い分野で福祉事業を展開している法人です。今は全体で約1,750名の職員が働いていて、それぞれの事業所で、その分野に合った「働きやすい職場づくり」に取り組んでいます。高齢者福祉の現場にはその分野ならではの工夫がありますし、保育園ではまた違った形での取組が行われています。
私は総務部で人事を担当しており、入職後の職員と関わる機会が多くあります。当法人の魅力や、時には課題についても、職員のみなさんと話す機会がよくあります。
入職した時点では、自分の適性がまだはっきりしていない方も多い中、色々な業種を経験しながら、自分に合った仕事を見つけていける環境があると思います。転職しなくても、法人内でまったく違う分野にチャレンジできるのは、私たちの大きな強みですね。学生さんにもその点は意識して伝えるようにしていて、「どうしてこの法人を選んだの?」と聞くと、「いろんな仕事に挑戦できるから」と答えてくれる方が多いです。資格取得支援や手当の制度も整ってはいるんですが、法人としてそれは“あって当然”だと思っているので、あえて強くアピールはしていません。
それよりも、「自分の可能性を試せる職場」であること、そして「仲間とのつながりを大切にしている職場」であることを、私たちは大事にしています。
宣言事業のガイドラインの中で、課題に感じたことや、取組で工夫された点はありますか?
宣言前からガイドラインの内容はすべて達成しており、法人としても歴史が長く、ある程度の仕組みは整っていたと思います。それでも課題を感じる場面もあります。特に採用については、今もなお苦労しているところです。介護職に限ったことではありませんが、介護スキルの高い人材を安定して確保するのは、正直なところ非常に難しいと感じています。
また、外国人職員の受け入れも進めていますが、これまでのように言葉だけで伝える方法では通用しない場面も増えてきました。写真や視覚的なマニュアルを活用したり、高齢の職員の方でも対応できるよう業務内容を工夫したりと、多様な人材に合わせた業務改善が求められています。
「働きやすい福祉の職場宣言」に参加したのは、少しでも法人としてのアドバンテージになればという思いがあったからです。緑のマークがあることで、職員だけでなく、利用者様や関係者の方々にも安心感を与えられるのは、大きなメリットだと感じています。
ただ、現状ではこのマークの認知度がまだ十分とは言えず、学生さんや学校の先生方にもなかなか届いていない印象があります。だからこそ、もっと積極的に発信していく必要があると感じています。
岡部さんは多くの採用を担当。やさしく穏やかな人柄が印象的で、求職者の方も話しやすそうに感じられた。
ガイドライン11「休暇取得、超過勤務縮減等に向けた取組を実施している」に関して、保育の現場でノンコンタクトタイムという取組をされていると伺いました。ぜひ詳しく教えてください。
はい、保育士が園児や保護者と接点を持たず、記録や事務作業に集中できる時間として「ノンコンタクトタイム」を導入しています。 「ノンコンタクトタイム」とは、保育士が子どもたちと直接関わる保育業務(コンタクトタイム)以外の時間を、意識的に確保する取組です。以前から、勤務時間外に保育記録や製作業務が発生してしまうことが課題となっており、働き方改革の一環として改善を進めてきました。
記録ソフトの導入や業務の見直しを行い、職員が勤務時間内に事務作業を行えるよう工夫しています。行事についても「本当に必要かどうか」を一つひとつ見直し、子どもたちにとって意味のあるものだけを残すようにしました。行事準備の際には他クラスの職員とも連携を取り合い、行事担当の職員がノンコンタクトタイムを取れるように日々調整しています。施設内では、管理表や業務予定表にノンコンタクトタイムを記入し、いつ誰がその時間を取るかを「見える化」しています。
この取組によって、残業時間も減少し、勤務時間内で業務を完結できるようになってきました。以前は月平均2時間程度の残業が発生していましたが、現在は残業ゼロを目指していきたいと思っています。
また、「ノンコンタクトタイム」という言葉が定着したことで、職員の意識にも変化がありました。これまで曖昧だった「空き時間」が、明確に「業務に集中する時間」として認識されるようになり、仕事の組み立てがしやすくなったという声も聞かれています。
この取組は、採用活動においてもアピールポイントになっています。求職者や学生の方にとって、「働きやすさ」が具体的に伝わる制度として、安心感を与える材料になっていると感じています。ノンコンタクトタイムがあることで、職員が無理なく働ける環境が整っていることが伝わり、法人への関心にもつながっていると思います。
ノンコンタクトタイムの導入で、保育に集中できる時間が増え、子どもとの関わりがより深まった。
子どもたちの笑顔を思い浮かべながら、職員全員でアイデアを出し合っている。
働きやすい職場づくりの一環として、特徴的な研修などがあればぜひ教えてください。
東京都同胞援護会では、階層別・役割別の研修制度を整備し、職員一人ひとりが自分の立場に応じて成長できる環境づくりを進めています。その中でも特に印象的なのが、メンタルトレーニング研修と、職場環境の意識づけにつながる「片付け研修」です。
メンタルトレーニング研修は、全法人職員を対象に実施しており、「色々なことがあっても、心をクリアにして、今この瞬間のパフォーマンスを発揮する」ことを目的としています。スポーツ選手も取り入れているようなメンタル技術を応用したもので、医学的にも効果が認められている手法です。職員が日々の業務の中で自分の感情と向き合い、集中力を高めるトレーニングとして活用されています。
片付け研修は、「働く環境を整えることも仕事の一部」という考え方を職員に浸透させる取組です。事務局では毎週金曜日の16:00から片付けタイムを設けており、職員が自分のデスクや周囲を整える習慣を身につけています。散らかりがちな環境を整えることで、気持ちの整理にもつながり、業務効率の向上にもつながっています。さらに、専門講師を招いた研修会も年に複数回開催しており、午前・午後に分かれてさまざまな職員が参加しています。こうした取組は、単なるスキルアップにとどまらず、職場の風土づくりや意識改革にもつながっています。
これらの研修を通じて、職員同士の横のつながりが自然と生まれることも、大きな成果のひとつです。研修をきっかけに、施設を越えた交流が広がり、「コミュニケーションのきっかけになる」「同期とのつながりが励みになる」といった声も多く聞かれています。施設の課題感を共有する機会にもなり、職場を離れて気持ちを整理できる貴重な時間になっているようです。
研修の企画・運営は、法人内の研修委員会が中心となって行っており、現場の声を反映しながら「今、必要な研修は何か」を常に考え、柔軟に対応しています。こうした取組が、職員の成長だけでなく、働きやすい職場づくりの土台にもなっていると感じています。
メンタルトレーニング研修の様子。施設を越えた仲間との交流が広がり、職員にとって貴重な時間となっている。
最後に宣言事業に参加しようと検討している事業所の方に向けてメッセージをお願いします!
東京都同胞援護会では、働きやすい職場づくりを「当たり前のこと」として日々取り組んできました。宣言事業に参加することで、これまでの取組を改めて見直し、再認識するきっかけにもなったと感じています。実際、私たち自身も「当然やっていることだから」と思っていた研修や制度が、外から見ると魅力的な取組として評価されることに気づかされました。
すでにガイドラインの項目を達成している事業所にとっても、宣言事業に参加する意義は大きいと思います。「うちはもうやっているから」と思っていても、宣言を通じてその取組を外に発信することで、求職者へのアピールにもつながりますし、職員の誇りにもなります。利用者様や地域の方々にとっても、安心感を持っていただくきっかけになるのではないかと思います。
都内のすべての福祉事業所がこうした宣言事業に参加することで、職場環境がより整い、福祉業界全体のレベルアップにもつながると思います。特に、福祉の仕事に関心を持つ学生さんにとっては、職場環境がしっかりしていることが目に見える形で示されることが、安心して応募できる材料になります。そうした情報が広がれば、福祉人材の確保にもつながっていくはずです。
宣言事業は、取組を「見える化」することで、職場の魅力を再発見し、外部にも伝えることができる良い機会です。ぜひ、前向きに参加を検討してみてください!
東京都同胞援護会では、多種多様な職種があり、さまざまなキャリアを目指すことができる。
