東京都福祉局

TOKYO働きやすい福祉の職場宣言

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株式会社 BabyOneインタビュー

人材不足知らずの保育園
─“辞めない職員”と“働きたい人”が集まる職場のつくり方

株式会社BabyOne 園長 塩崎先生

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21歳で保育士になり、子どもが1歳から保育園に預け仕事を続けてきた塩崎先生。以来、保育の現場に立ち続けている。

まずは自己紹介と法人の紹介をお願いします。

株式会社BabyOneの園長、塩崎と申します。以前は、私立認可保育園で保育士として勤務しておりました。「働きやすい職場を自分の手で作りたい」と、代表の山本と株式会社BabyOneを平成25年に立ち上げました。
目黒区鷹番一丁目にある小規模認可保育園として、0〜2歳児19名が通っています。
職員は常勤・非常勤あわせて18名在籍しており、子ども一人ひとりを、職員全員で見守り保育しています。

「働きやすい福祉の職場宣言事業」に参加された理由を教えてください。

ある日入社してから半年程経った職員から「ここはホワイトを通り越して、「透明」な、働きやすい職場です」と言われたことがあり、働いている職員にとってそんなに働きやすい環境なのかと気づいたことがきっかけでした。
また、意向調査の際、他職員からも「ここを辞める時は私が保育士の仕事を辞める時だと思っています」と言ってくれたことがあり、そんな風に思ってくれる職員がたくさんいるこの園の良さを「見える化」してみたくて、宣言事業に参加しました。

参加してみて、どのような変化がありましたか?

他事業所と比較する機会がなかったので、自分たちの取組を客観的に見られる良い機会になりました。 今回のようなインタビューを受けることで、職員たちも福祉局に注目される園で働いていると言う誇りを持ってもらえますし、この園で働く価値を感じてもらえる機会になったと実感しています。
玄関に掲示している宣言マークを見て保護者の方は納得した上、「控えめに言って最高の園です。」などのご感想をいただき、園の取組や姿勢が保護者の方にも安心を届けられていると思うと嬉しく思います。

写真ここで過ごす日々が、生涯にわたって〈愛された心の記憶〉として胸に残るように、子どもたち一人ひとりを、大切に、あたたかく保育している。

職員が辞めない、働きたい人が集まる理由は何でしょうか?

職員たちは良い人間関係を築けるよう努力を惜しまないでいてくれるのでみんな仲が良く相手を思いやる精神が根付いています。
安心して働ける環境だからこそ求人が必要になった際は「職員紹介制度」を使って定着率向上にも職員自ら貢献してくれます。

それはどんな制度ですか?

今働いている職員が自分の大切な人を紹介してくれると入職が決まった際に、紹介者と入職者の両方に5万円の紹介手当を支給しています。こういった取組のおかげで会社では有料の求人サイトは一切使わず、浮いた予算を子どもたちや職員のために使うことができています。
今回もパートさんの募集をかけると1日で30件近く問い合わせがあり、翌日には働いてくださる方が決まりました。人材不足は今まで園を運営していて感じたことがありません。

写真子どもたちが楽しみにしているイベントや活動がいっぱい。 昼休みにも先生たちは子どもたちの話題で盛り上がって、職員が心から子どもたちのことを大好きなのが伝わってくるとのこと。

働きやすい職場をつくるために、どんな工夫をされていますか?

まずは「年間スマイリー賞」です。『働きやすい福祉の職場宣言』のセミナーで介護施設の事例を聞き、良い取組だなと思い、すぐ園でも導入しました。この賞は、その年に最も輝いた笑顔で仕事をした職員に贈るもので、パートの方も含め全職員が対象です。選考は笑顔だけでなく、成長や周囲への支援など、さまざまな「輝き」を総合的に評価します。表彰状はオリジナルで、その人の良さを言葉で伝えます。副賞は1万円。選ばれた職員には「この先生の頑張りは確かにすごかった」と、納得の声が多く、自然に称え合う雰囲気が生まれます。

写真表彰状は園のオリジナルで一人ひとり内容も変えているとのこと。発表される当日まで誰が選ばれるかわからない。

それから、休暇制度も工夫しています。妊活や介護、持病など、職員一人ひとりの状況に寄り添えるよう各制度を設けています。制度の利用を必要とする状況にある職員にとってはその時期に細かく休みを取る必要があるため、1時間単位で休みを取得できるようにしています。「その日その時間」に病院へ行く必要があるということも多いので、短時間だけ休みたいというニーズにもしっかり応えられるよう設定しました。
有給休暇は園創設から12年間ずっと100%全職員が取得できています。 職員会議は夜遅くまで残って行うのではなく、各自自宅からオンラインでラフに参加できるようにして子育て中の職員も参加しやすい形にしました。コロナをきっかけにこのスタイルに切り替えたのですが、職員の自分時間をコロナ前よりずっと会社として大切にできるようになったと感じています。

園を運営する中で心がけていることはありますか?

園の成長には保護者の方々からいただくご意見もとても重要だと思っています。 昨今保育業界は厳しいご意見やご指摘をいただくことも多くて大変だと聞きますが、私たちの園ではそれを職員全員〈成長させてもらえる〉有難い助言だと受けとめ、大切に考えています。
誰もが言いづらいことを、勇気を出して発信してくださる保護者の方の声は、子どもたちが花だとしたら花咲く時に必要な栄養のようなものだと思っています。
だからこそ年に2回、保護者の方とは運営委員会を開催し、その1年で起きた怪我の報告やその怪我を通して園が行った対策・対応などもすべてご報告し、共有しています。起きたことは包み隠さずそれを今後の安全に繋げていくことで今以上に安心できる園が築いていけると信じています。

手書きの連絡帳にはこだわっているとお伺いしましたが?

はい。うちでは「手書きの連絡帳」を大切にしています。手書きには心が込められていて、記憶や思い出として深く残る力があると感じています。
連絡帳はオリジナルで、毎日びっしり書いています。「元気でした」だけでなく、その日の様子や可愛かった姿、話してくれた言葉、成長の瞬間まで、職員が丁寧に記録しています。
働きやすさとは、ただ楽をすることではなく「何に手間をかけるか」を間違えないこと。その判断を丁寧に積み重ねることが、良い園づくりにつながっていると思います。
手書きすることで職員は文章力や表現力のスキル向上にもつながります。
もちろん、無駄を省く工夫もしています。たとえば、日誌は〇で囲めば済むよう極力文字記入の欄を少なくしたり、保護者用のアンケート用紙には切り取り点線を1枚ずつ入れ、ハサミなしでも切り取れるようにしたり。アンケートはオンラインで簡単に回答できるようにするなど、とにかく小さな手間を省き、職員にも保護者の方にも生活の何気ない動作が楽になる環境をつくっています。

写真BabyOneオリジナルの連絡帳。「どんなに時代が便利になっても、手書きの良さを残したい」──先生の揺るぎない思いが込められている。

写真20歳のとき、先生のお母さんから贈られた保育園時代の連絡帳。今でも、大切な宝物として残っている。

福祉のお仕事に興味がある方へ、メッセージをお願いします。

福祉の仕事は「大変」というイメージが大きくなりがちですが、実際は働きやすい職場もたくさんあります。保育の仕事には、言葉にできないほどの、小さな心遣いがたくさんちりばめられていて、たとえば、雨の日に登園してきた子の濡れた靴に新聞紙を詰め、履いたときに気持ち悪くないようにしたり、子どもに触れる手の指先まで、優しさを込め触れた時に「愛情」が伝わるように配慮したり。
そんな細かな仕事はAIには絶対にできないからこそ人が人を育てる保育の仕事は他にはない魅力的な仕事です。保育士の資格を持っているけれど現場を離れてしまった方などは、ぜひもう一度、働きやすい職場をあなたの足で見つけて、保育の世界の奥深さにぜひ触れてほしいです。

最後に、働きやすい職場づくりに大切だと思うことを改めて教えてください。

私が大切だと思っているのは、
「いいと思ったことはすぐにやってみる」というチャレンジの姿勢と、
「小さなことでも丁寧に積み重ねていく」という日々の実践です。
形式だけで不要だと思うものは極力省き、大切だと思うものは手間やコストがかかっても決して手放さない。この見極めが、働きやすい職場づくりにつながると感じています。
「声を聞く」だけでなく、行動と結果につなげることが何より大切だと思っています。

写真学芸大学駅が最寄りの、鷹番一丁目にある小さな保育園。今日も、子どもたちの笑顔と元気な声が園いっぱいに広がっている。

株式会社BabyOne

事業分野 子供
実施事業 地域型保育
所在地 東京都目黒区鷹番1丁目15番3号
電話番号 03-3713-8000
URL https://babyone.webnode.jp/

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