ケースワーカーは、被保護者の日常生活、経済的、社会的な自立を一緒に目指す伴走者です


渡邊 保子さん
生活保護ケースワーカー(福祉職)
新宿区福祉部保護担当課
大学で地域福祉を専攻し、社会福祉士の資格を取得した渡邉さんは新宿区の福祉職として採用され、9年目になります。被生活保護者のケースワーカーとして日々忙しく業務を行う中でも、休日は劇場に足を運ぶなどリフレッシュ時間も大切にし、オンオフを切り替えて自身のライフプランとのワークバランスをうまく取っています。
(取材:2024年10月)
現在の仕事、業務の内容を具体的に教えてください。
ケースワーカーとして、病気やけがなどの理由で働けなくなるなど、生活に困っている対象者に対して最低限の生活である普通の暮らしを保障するため、生活保護費支給決定の事務や、保護費を受給されている方の自立に向けた支援をしています。家庭訪問や窓口での面接、調査等を通して保護等の必要性を判断し、相談や援助を行っています。
現在の仕事を知ったきっかけや、目指した理由を教えてください。

大学受験のタイミングで、家族の事情があり国家資格の取得を目指せる大学を選択しました。公務員を志したのは、在学時に社会福祉協議会で社会福祉士試験の指定科目であるソーシャルワーク研修を行ったのがきっかけでした。地域福祉を専攻し学んでいましたが、領域を問わず生活基盤の支援を行いたい、行政であれば、根本を支える仕事ができると思ったからです。
現在の仕事の中で、一番大切にしていること、力を入れていることは何ですか?
生活保護制度は、被保護者の生活を安定させて自立を支援していくための一つの手段として捉えることを心がけています。必要な支援を必要なタイミングで必要な場所に繋げることが大切です。この仕事は、同じルーティーンを繰り返すことがなく、人それぞれ人生も違いますし生きてきた過程が違うので同じようなケースがあっても全く違う結果になることもあります。一人ひとり異なる人生を歩まれていることを前提に、本人を取り巻く環境について問題点にとらわれずに理解することを大切にしています。
現在の仕事の中で、感じるやりがいは?

被保護者の方の生活を支援する中で様々な分野の関係機関と協働します。仕事をしながら多分野の知識が増え、自分の身についていることを実感したときに、成長を感じてやりがいを感じます。高齢者のケースワーカーを6年担当していた時の横のつながりや人脈の中で得た学びが、現在に活かせていることも自身の成長や強みになっていると感じます。また、被保護者の方と面談を重ねるうちにご本人の就労意欲がわいてきたので就職先を見つける支援を行い、その後も電話で仕事の相談を受けていたところ、生活が安定して保護廃止(注)となったことがありました。いきいきとした表情で感謝の言葉を頂いたことが心に残っていますし自分の仕事のやりがいを感じた出来事でした。
(注)保護費の支給等が不要な状態となること。
現在の仕事で、難しさを感じること、辛かったことはありますか?乗り越えた方法も教えてください。
福祉事務所は自立へ向けた支援をすることはできますが、それを達成するのはあくまで被保護者ご本人なので、そこは難しさを感じます。ただ、生活環境が変わるタイミングや本人が問題に気付いたタイミングで、支援を集中して行うことは大切だと思います。
この仕事をしていると、稀に暴言を吐かれたり、今までの支援が無に帰すようなことが起きることもありますが、一人で抱え込まず、職場内で話したり共有したりするようにしています。新宿区の保護担当課は、職員の皆さんが今後どうしていったら良いかを一緒に考えてくれるので安心できます。
どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?
仕事の進捗を確認しながら休みを調整できる点は、この仕事の魅力の一つなので、自分でスケジュールを立てられる計画性のある人は向いていると思います。様々な方がいますし、様々なことが起きるので、ある程度は仕事と割り切ることも必要かと思います。
これから、この分野のお仕事を目指す人へメッセージを。
生活保護やケースワーカーに対して、ネガティブな印象がある方もいるかもしれませんが、この仕事に関われることは人生の経験としてかなり魅力があると思います。やりがいがある以上に、仕事としての面白さがあるので興味を持ってもらえると嬉しいです。新宿区は楽しい街ですよ!


新宿区福祉部保護担当課紹介
自治体名:新宿区福祉部保護担当課
- 庁舎住所、電話番号:新宿区歌舞伎町1-4-1 03-3209-1111
(取材:2024年10月 保護担当課課長 小原良太さん)
新宿区保護担当課で担当している代表的な施策を教えてください。

主に生活保護受給決定後の皆さんへの短期的長期的支援業務を行っています。新宿区はこれまでもホームレス、DV等被害女性への支援などに先駆的かつ専門的に尽力してきました。また、生活保護利用者への自立支援に関係機関と連携してきめ細かく取り組んでおり、経験やスキルの蓄積があることも特長です。
新宿区内における福祉現場の現状や課題を教えてください。
現状としては、やはりホームレスや住民票を持たない方、地方からの流入も多いところが新宿区ならでの特性、と言えると思います。個々の被保護者のニーズに寄り添った支援が必要になります。
また、ベテラン職員の退職や新規職員の転入が著しい中、若年や外国籍の方の申請など、多様化する福祉ニーズに対応するための、スキル確保・向上には継続して注力する必要があると考えています。
職員が働きやすいように工夫されていることはありますか。

業務中の会話・対話を推奨し、職員間のコミュニケーションを円滑にすることで、一人の職員が課題や悩みを抱え込まないようにしています。また、業務が立て込んでいる職員には別の職員が肩代わりすることが自然とできるよう職員同士の助け合いを推奨しています。ベテランによる勉強会や事故防止などの研修も行なっています。
これから、この分野のお仕事を目指す人へメッセージを。
生活保護ケースワーカーの仕事は、単に相手に寄り添い希望を叶えるために動くだけではなく、公務員として公平性や効率性の観点も持ちながら、その人らしく暮らせるよう総合的に支援する仕事です。仕事内容は多岐に及び、スムーズに進まない場面も多いですが、直接、人の暮らしの深い部分に関わっていくことは、同じ福祉分野でもそう経験できないことだと思います。人生観の変わる仕事です。