福祉の仕事、カウンセリングを受けて体験へ!

東京都が実施する「ふくしチャレンジ職場体験事業(以下、ふくチャレ)(外部リンク)」は、福祉業界に興味を持つ幅広い年代の求職者に向けて、福祉の仕事への理解を深めてもらうため、職場体験を通じて就業をサポートしてくれる事業です。
今回はこの「ふくチャレ」にチャレンジするためまずはカウンセリングを受けるところからスタートしました。(8割ほどの方がオンラインでの説明会やカウンセリングに参加されるそうです。私は今回、直接お話を伺うことでより深く理解ができるかと考えて、説明会会場に直接伺いました。
カウンセリングでは、自分の希望を丁寧に聞いてもらい、自分が何に関心があるか、またどんな施設が合いそうかを一緒に考えてくれます。体験できるプログラムの説明や、体験後のフォローについても詳しく教えてもらえたので、初めてでも安心でした。
体験できるのは、保育所や学童クラブといった児童・保育分野の施設や、ショートステイや就労移行支援などの障害福祉分野の施設などさまざま。私は「通いやすさ」と「関心のある分野」を伝えたところ、自宅から近い就労移行支援事業所を紹介してもらえることに。
カウンセリングは一対一で、時間はだいたい45分くらい。緊張していたものの、丁寧に話を聞いてもらえてほっとしました。
実際に福祉事業所へ伺う時の服装や身だしなみ、心がけることや注意点なども教えてもらえるので、様々な不安が解消され安心して伺う心づもりができました。



知らない世界にふれる。紹介された職場へ

先に行われたカウンセリングで職場体験場所として紹介していただいたのは、杉並区にある就労支援の福祉事業「杉並いずみ第二」でした。ここでは18歳以上の心身障害がある方々が、それぞれのペースで定期的に通って「ものづくり」を中心とした軽作業に取り組んでいるとのことでした。初めて福祉現場を直接見られるという期待感と共に「実際、福祉の仕事の体験はどのようなことをするんだろう?」という多少の緊張と不安も覚えつつ伺いました。
体験を受入れてくださった就労継続支援B型事業所「杉並いずみ第二」の施設紹介はこちら
「杉並いずみ第二」は通りに面したガラス張りの建物で、外からでも中の様子が伺えるつくりです。窓越しにはご利用者様の個性があふれるイラストや手作りの可愛い作品が並んでおり、道行く人の目を引きます。温かく親しみやすそうな雰囲気だというのが最初に持った印象でした。
主役はフェルトのマスコット

私が建物の中に入ると、作業中のご利用者様が何人か「こんにちは」と声をかけてくださり、明るい笑顔で迎えてくれたことで、緊張していた気持ちが少し和らぎました。
この日のメイン作業は、フェルトボールを使ったマスコット作り。こちらで作っているのは様々な動物やフルーツ、ちょっとユニークなおでんの具など、一つひとつに個性があって可愛らしい作品ばかりです。色とりどりのフェルトを同じ重さに分けるところから始まり、丸めて形を整え、目などの飾りをつけ、縫い合わせるなどの工程を、皆さんで役割分担しながら丁寧に作業されていました。それぞれのご利用者様の性格や得意なことに合わせて、適した担当が割り振られているそうです。体験では、このマスコット作りに挑戦させていただきました。
ご利用者様とのやり取りから学ぶ

作業スペースの落ち着いた雰囲気の中、まずはフェルトを丸める作業を体験。プラスチックケースにお湯と細かく裂いて計量されたフェルトを入れ振っていきます。やってみると意外に難しいもので、うまく丸い形にならずに困っていると、慣れた手つきのご利用者様が「こうやって丸めるときれいになるよ」と教えてくれました。その後も作業別のテーブルを回り、職員やご利用者様に教わりながらそれぞれの作業を体験。とても人気があってどんなにたくさん作ってもどんどん売れていってしまうというフェルトのマスコットを皆さんが集中して作っている姿がとても印象的でした。そんな中でも体験に来ている私に興味を持って話しかけてくれるので、最初に抱いていた緊張や不安がすぐに安心感や作品づくりの楽しさへと変わっていくのがわかりました。



それぞれの得意をいかして

フェルトを綺麗に丸めた後は、作るマスコットに合わせて、フルーツの皮や顔などの装飾を施していく作業に進みます。ここでも職員の方やご利用者様に教わりながら取り組みました。今とても人気があるのはシマエナガのマスコットで、丸めた白いフェルトに手や尻尾、黒い目や赤いほっぺをつけていく作業を進めると、どんどん可愛い作品が仕上がっていきます。驚いたのは、ご利用者様の手際の良さと集中力。黙々と作業に打ち込む姿に、「仕事」としての誇りも感じます。
ご利用者様それぞれの得意を活かせるように環境を整え、作業を進めながら困り事があれば優しい声かけをしている職員の方たちがこの場所を支えていると実感しました。



「支援」よりも「ともに働く」

職員の方に聞いてみると、「“支援する”というより、“ともに働く”という感覚が大事だと思うんです」とのこと。日々の作業だけでなく、休憩の声かけ、困っている時のさりげないサポートなど、ご利用者様一人ひとりに合わせた関わりが求められるこの仕事。小さな達成感を一緒に喜べることがこの仕事の魅力の一つだと伺いました。
体験を終えて
“福祉の仕事”と聞くと、特別な知識や経験が必要だと思いがちですが、この体験を通して感じたのは「人と人として関わる」ことの大切さでした。
決して派手な仕事ではないけれど、誰かの日常を支えたり、喜びを分かち合える仕事。
職員の方のやさしい声かけや、ご利用者様の真剣なまなざしにふれながら、「自分にもできることがあるかもしれない」と、福祉の仕事が少し身近に感じられるようになりました。誰かの日常を支えるやりがいがあることを、もっと多くの方に知ってもらいたいと思います。