福祉は「特別」ではない。柔らかな視点で寄り添う支援の現場


杉並いずみ第二(ふくチャレ受入れ事業所)
業種:就労継続支援B型事業所
施設住所、電話番号:杉並区方南2-3-5ベルエール方南町 03-3321-4485
知的障害者の方に、仕事を通して働く意欲と仲間と共に生きるよろこびを。小規模な中で自立生活への支援も、きめ細やかに行う施設です。
(取材:2025年7月)
こちらの施設のスローガンを教えてください。
- 自信を持って暮らし、自分自身を価値ある大切な存在だと感じていけるよう、一人ひとりのありのままを大切にします。
- 毎日の作業の中にあるどんな小さなことも、自分でできることは自分で、を大切にします。
- やってみたいという気もち、チャレンジすること、を大切にします。
「杉並いずみ第二」で行っている業種やサービスについて教えてください。
杉並いずみ第二では、就労継続支援B型事業所として、18歳以上の心身に障害のある方を対象に、多様な作業活動を提供しています。利用者の皆さまが、それぞれのペースで無理なく通いながら、働く喜びや社会参加の意欲を育めるよう、以下のような作業を行っています。
- 手織り、染物、手工芸品(フェルト小物、レジンアクセサリー、刺し子縫い物など)の制作
- 児童教育雑誌付録の袋詰め・封入
- 手焼きせんべいの製造
- 公園、マンション清掃など軽作業
これらの活動を通じて、日々の生活にリズムを持たせ、自信や達成感を積み重ねていくことを大切にしています。



東京都の「ふくしチャレンジ職場体験事業(通称:ふくチャレ)」の受入れについて聞かせてください。
福祉の仕事には、きっとまだ「大変そう」「特別な人にしかできない」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。でも、実際の現場に触れてみると、そのイメージが少しずつ変わっていくことがあります。私たちの事業所では、利用者さん一人ひとりが自分らしく過ごし、「できること」を少しずつ広げていけるような支援を目指しています。

支援する側の私たちにとって大切なのは、「こうでなければいけない」と決めつけないことです。障害のある方の感じ方や得意なことは、本当に様々です。だからこそ、私たち職員にも「柔らかな視点」と「おおらかな心」が求められると感じています。固定観念を持たず、「こんな関わり方があるんだ」「福祉って身近なことなんだ」と感じてもらえることが、何よりの一歩だと思います。その人に合わせて寄り添える方に来ていただけたら嬉しいです。特別な資格やそれまでの経験よりも、ふくチャレの体験を通して、福祉の現場のやさしさや奥深さを、少しでも自分ごととして受け止めてもらえたら嬉しいです。
ふくチャレを利用していずみに就職された方のリアルな声をお伺いします。
ふくチャレを利用したきっかけは?

これまでいくつかの職場で勤務経験がありましたが、なかなか自分に合う場所を見つけられずにいました。そんなある日、介護士をしている友人に誘われて近所の障害者施設のお祭りに参加した時のこと。そこで、障害がある方から積極的に話しかけられ、どう接していいのか分からず、戸惑って態度に出てしまいました。帰宅後、友人から「その態度は違うよ」と指摘され、自分の中にある思い込みや距離感に気づかされました。自分の中で、「苦手なこと」にチャレンジしてみようと思い始めていた時にふくチャレのチラシを見て応募し、感覚を途切れさせたくなかったので、2日連続での体験を申し込んだのが始まりです。
苦手意識からのチャレンジ、実際に挑戦してみて感じたことは?
初日は、利用者の方との距離感が思っていた以上に近く、お祭りの時と同じような戸惑いを感じ、「自分にできるだろうか」という不安が芽生えたのが正直な気持ちでした。2日連続でいずみに体験に来ましたが、その時もまた同じ利用者の方がすぐ自分のところに来てくれて、その人と関わるうちに自分の中のガードがなくなっていく感覚があって、その人の表情や言葉、仕草の一つひとつに親しみがわいてきて、人にはそれぞれ魅力があるんだというのに気づいた瞬間だったと思います。
そして就職につながった経緯は?
体験中の自分の気持ちの変化が驚くほど自然だったこと、そして「ここで働いてみよう」と心から思うようになったことで、職員としてこの施設で働き始めて半年が経ちました。就職を決めた理由は、自分の中にあった障害のある方への偏見や思い込みに気づいたことや、「福祉の現場に飛び込んでみよう、ここならやっていけそうだ」という率直な自分の気持ちを信じてみようと思えたことが大きかったです。
現在の気持ちを教えてください。

以前は苦手だと思っていた世界に、今では誇りとやりがいを感じています。一緒にお祭りに行った友人からも「最近、目つきが優しくなったね」と言われ、少し自分が変われた気がしています。そして、体験の時にすぐに自分のところへ来てくれた利用者の方は、今ではまるで弟のように可愛くて、自然と気持ちを込めて接することができるようになりました。これからも、利用者さんの役に立てるよう、自分なりにできることをひとつずつ増やしていきたいと思っています。