【手話通訳コーディネーター・手話通訳】北條 真由美さん

「手話」はとても素敵な言語です

手話で講師をする北條さんの写真
北條 真由美の正面写真

北條 真由美さん

手話通訳コーディネーター・手話通訳士

東京手話通訳等派遣センター(7年目)

ドラマで手話の存在を知ったという北條さん。実際に電車内で聴覚障害者の方が手話で話している姿を目にして音声ではないコミュニケーション方法に衝撃を受けます。その後聞こえない方のバイタリティーや手話言語の奥深さに深く魅了され、手話サークルや養成講座に通い手話を身につけました。北條さんが、手話通訳士として活躍を続けられる背景には、「とにかく手話が大好き」という思いと、利用者の方の笑顔と感謝の声、わかりあえる仲間の存在、そしてご家族の理解があります。

(取材:2024年10月)

手話通訳士としての現在の仕事内容を教えてください。

現在、居住地の登録手話通訳者・手話通訳士・東京手話通訳等派遣センターの登録通訳者の資格を生かして、個人から公的機関、企業などからの依頼を受けて仕事をしています。手話通訳を必要とされる場面は様々で、例えば個人ですと病院や学校、銀行、役所など日常生活に密着したあらゆる現場において聞こえない方のコミュニケーションを支えています。
「言葉」を扱いながら、人と人をつなぐ仕事であることを意識して取り組んでいます。

仕事の中で、一番大切にしていること、力を入れていることは何ですか?

手話通訳士は日々の研鑽が欠かせません

聞こえない方がその人らしく生きられるように「情報保障」(注)をすること、そのために手話通訳者として何ができるのかを考えることを大切にしています。また自分の主観が入らないように客観的にその場を見るように心がけています。
日常生活においては、日々新しい言葉が生まれます。そうした中で、常にアンテナを張って勉強を続け、聞こえない方たちの反応や表情から、状況を読み取る観察力も磨くようにしています。
(注)情報保障:聴覚障害者の方に対する手話通訳や要約筆記は、聴こえない、聴こえにくいことによって情報が入りにくく、得られないために本来得られるべき情報を保障している。

現在の仕事の中で、感じるやりがいは?

講演会などで、講演者が冗談を言った時に、会場にいる聞こえる方と聞こえない方が一緒に笑うことが出来る、そういう通訳ができた時は、安堵と情報保障をきちんとできたというやりがいを感じます。こういう事ができるのは事前準備をしっかりした結果だと思います。日々の研鑽の努力が報われる瞬間でもあります。

仕事を日々行う中で、難しさを感じるのはどんなことですか?

手話通訳をしている北條さん

通訳現場は様々です。生活に密着した病院、学校、自治会、役所から企業、政治などの分野の話を理解し、思考しながら手話に翻訳し、通訳する技術が求められます。通訳をする相手は毎回違うので、瞬時にその方の要求を見極め、判断しながら進めることが難しいと感じます。また、聞こえない方の中には、これまでの長い人生で、無理解や差別を受け充分な情報保障に恵まれなかった方も多くいます。そのことに配慮した手話通訳をしたいと思っています。

これまでに心に残っている出来事はありますか?

高齢の女性の通訳をした時に、「ありがとう」と感謝の言葉をいただいたことがありました。「手話」は、長く教育の場で使うことを禁じられる時代があり、その後聞こえない人が一丸となって、手話通訳という制度を作ってきた(「ろう運動」といいます。)という歴史があります。この方の若い時は通訳が居なくて大変な時も多かったのだろうと、だから今目の前にいる通訳者にお礼がしたいのだと感じた出来事でした。聞こえない方の背景を理解しながら通訳を心がけるきっかけにもなりました。

今後の目標や夢を教えてください。

聴覚障害がある同僚との手話によるコミュニケーション

自分自身の目標としては、聞こえない方がその場に参加し自分で決定し、積極的に主体的に生きられるような通訳がしたいと思っています。いつでもどこでも手話通訳を必要としてくださった時に、その内容に対応できるような通訳技術を習得したいと思います。
また、現在、聞こえない方の社会参加の機会が増え、手話通訳のニーズも増えています。その要望に応えるためにも手話通訳者の仲間を増やしたいというのが手話通訳士としての夢です。
手話が広がり、手話通訳がなくてもコミュニケーションが成り立つ社会になることが大きな夢です。聞こえる方が手話を覚えて、いつでもどこでも手話で意思疎通できるような社会になるといいなと思います。

これから、この分野のお仕事を目指す人へメッセージを。

「手話」は素敵な言語です。習得するのに時間がかかると思いますが、諦めないでコツコツ勉強を重ね、また聞こえない方との交流からも学んでほしいと思います。今とは違う、手話の世界を経験することができますし、普通に生活していたら出逢えないであろう世代の方々と一緒に活動することができます。そして毎日たくさんの学びがあります。
皆さんがこの世界に飛び込んでくれて、仲間になってくれることを待っています。

手話が大好きと話す北條さん
手話通訳士養成講座も担当
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