「年齢」で判断するのではなく「その子自身」を見ることが大切


きさらさん
保育士(児童養護施設職員)
社会福祉法人 六踏園 第二調布学園(6年目)
様々な理由から家庭での生活が困難な子供達を養育する児童養護施設で保育士として勤務するきさらさん。家庭に近い雰囲気の中で、子供達が安心して生活を送れるように心配りをしていますが、複雑な事情や思いを抱える子供達と向き合うことの難しさもあると言います。辛い時や落ち込んだ時は、子供達がふとした時にプレゼントしてくれた折り紙や手紙に励まされ、子供達の生活と笑顔を守るために日々奮闘しています。

現在の仕事、業務について、どのようなことをしているか教えてください。
児童養護施設の第二調布学園で、地域小規模型グループホーム(GH)で幼児・低学年の子供を担当し、食事や入浴等の生活支援や学習支援などを行っています。5〜6名の子供達はここから地域の幼稚園や学校に通っており、職員や支援員が宿直して家庭的な雰囲気の中で密接な関係を築いています。
子供に関わる仕事を目指したきっかけを教えてください。
中学生の頃に行った職場体験先の保育園で、小さい子供と触れ合い、そこで働く先生の姿を見て、漠然と「こういう仕事いいな」と思ったのが最初のきっかけだったと思います。2週間の体験の間、とにかくずっと楽しかった記憶があり、保育士や幼稚園教諭を目指して大学に進みました。授業の中で初めて児童養護施設について学び、「もっと知りたい」と現在の職場での実習に参加させていただきました。就職を考える時期になり、保育園での勤務も考えましたが、児童養護施設のことが頭から離れず、目指してみようと思いました。

実習中のエピソードや、現場を見て就職を決めた理由を聞かせてください。
実習をする中で、児童養護施設に入所してきた子供達が、日々様々な思いを抱えながらも笑顔で職員と過ごしている姿を見て、自分も子供の笑顔につながる存在になれたらと思い、この第二調布学園への就職を決めました。
現在の仕事の中で、感じるやりがいは?
子供達の成長を感じることや、笑顔が見られる瞬間です。基本的生活習慣が身に付き、子供達が自分でできることが増えたなと感じる時、やりがいを覚えます。例えば、幼稚園に通っていた子供が小学生になり、黄色い帽子をかぶって学校から帰ってきた姿は心を打たれるものがありました。他にも、皆で一緒に夕飯の時、学校の話など今日あったことを子供同士で笑って話している姿を見ると嬉しいなと感じます。

子供達が笑顔で過ごせるよう工夫されていることはありますか?
幼児・低学年の子供達なので、まだまだ大人に甘えたい気持ちが強いです。なかなか一人ひとりと過ごす時間が取れないのですが、何気ない会話や遊びを通して、気持ちを満たすことができるようにしています。また子供が悩んでいるときには、心を開いてくれるよう、時間をかけ、話をしています。そして、ここではそれぞれが自分自身のことを考えられる、安心して自身と向き合うことができる環境を提供できるようにしたいと思っています。
現在の仕事の中で、一番大切にしていること、力を入れていることは何ですか?
子供を年齢で見ないことです。入所している子供達の多くは、乳児期や幼児期に愛着形成(注)ができず、情緒が不安定になったり感情の起伏が激しくなることがあります。この年齢ならできるだろうと思ってしまい、つい子供達に求めすぎてしまうことが多々ありました。その時々の子供の状態(精神面)を見極めながら、日々対応をするようにしています。
(注)乳幼児と親や保育者との間に形成される情緒的な結びつきのこと。

現在の仕事で、辛いことや大変なことはありますか?乗り越える方法も教えてください。
自分自身の感情を上手くコントロールできなかった時です。子供からの暴言や暴力に、つい私自身も感情的になってしまう時があります。そういう時には、力不足だと感じ落ち込みます。そんな時は同じチームの職員に共有し、話を聞いてもらうことや、自分自身で振り返りを行い、次はどのように対応したらよいか考えていく中で、落ち込んだ気持ちを整理しています。
勤務して6年、きさらさん自身の成長を感じることはありますか?
例えば子供や自分が感情的になってしまった時など、以前はすぐに解決しようと焦ってしまうことがありました。現在は、他の職員と情報の共有やアプローチ法など模索する中で、少し距離や時間を置いて、時間がかかっても解決できればいいなという気持ちを持てるようになり、余裕が生まれてきたと感じます。
今後の目標や夢、キャリアプランを教えてください。
現在は幼児・低学年の子供を担当していますが、職場の異動で今後は小学校高学年~高校生の担当になる可能性もあります。その時には、自立や進路選択など、幼児・低学年とは異なる支援が必要となるので、そういったことに関する知識を深めたいです。また、子供自身だけでなく、子供を取り巻く家族などの環境に対する知識や支援の力も身に付けたいと思っています。

