ドキュメント5 塚本さん(障害部門)第9回 ワタシのシゴト編「『わからない世界』で見つけたやりがい」

「ドキュメント ワタシのシゴト×TOKYOでフクシ」へようこそ。

今回紹介するドキュメントでは、東京都三鷹市の障害者支援施設で働く、生活支援スタッフの塚本さんにクローズアップ。
第9回 ワタシのシゴト編では、「働くからこそわかる、福祉の仕事のやりがい」について、塚本さんの生の声をご紹介します。

緑の宣言マークを持つ塚本さんの写真

社会福祉法人にじの会

大沢にじの里(入所)

生活支援スタッフ 塚本さん

あえて飛び込んだ「わからない世界」

「人と関わる仕事をしたい」と思って大学進学を考えていた時、福祉と教育どちらの道に進もうか悩みました。そのことを高校の先生に相談すると、「福祉は未来がないからやめた方が良い」と言われたのです。その言葉を受けて「それなら私が福祉の未来をつくっていこう!」と思い、福祉のことを学べる大学へ進学しました。
大学に入るまでは、「福祉」についてわからないことがたくさんありました。だからこそ、わからないことは、大学4年間をかけて深く学ぼうと考えて福祉が学べる大学に進学しました。授業を受ける中で、言葉を聞いただけではわからないことが多かった「知的障害」についてもっと学びたいと考え、障害分野での学びを深めました。

就職活動では、自宅から通える範囲で障害者施設を探していたところ、にじの会に出会いました。面接後すぐに採用の連絡をいただきましたが、自分の目で見て確認してから入社を決めようと施設見学に行きました。いろいろな施設を見学した中で、どこよりも利用者の方が楽しそうに活動している様子を見て、直感で「ここだ!」と思い、入社を決めました。重度知的障害者の方が入居される施設に配属され、目の前の利用者の方と向き合う日々を重ねていたら、気が付けば今年で入社9年目になりました。

インタビューを受ける塚本さんの写真

コミュニケーションは“話す”だけじゃない

仕事を始めて最初にぶつかったのが「コミュニケーションの壁」でした。
私の働く施設に入居されている利用者の方は言葉での会話が難しい方が多く、話しかけても単語のみの返答をされることも多くあります。そんな利用者の方とどうやってコミュニケーションを取っていこうかと悩みました。

しばらく色々試行錯誤している中で、私は利用者の方と「言葉」でコミュニケーションをしようとしていることに気が付きました。だから利用者の方も「何言っているんだろう」という顔をされることが多かったのだとわかり、そこからは言葉だけでなくボディランゲージなどを使いながら、「からだ」でコミュニケーションを取ることを意識しました。

しばらく経つと、いつも反応が薄かった利用者の方が、突然、私の顔をぎゅっと触られたのです。先輩に相談すると、「塚本さんを好きな証拠だよ。1、2ヶ月頑張ったね」と言っていただきました。「顔をぎゅっと触る」ことは、私とその利用者の方が初めて通じたコミュニケーションだったのです。
これがわかった時、「自分も利用者の方と心を通わせることができた!」と楽しさと嬉しさを感じました。それ以降も試行錯誤を重ねた今は、利用者の方と心を通わせるためにまず、利用者の方が自分の思いを身ぶりや手ぶりで表現できるように支援することが私のやりがいだと感じています。

ご利用者様とコミュニケーションをとる塚本さんの写真

待つことは福祉の大事な仕事

この仕事を続けていて、大事にしていることは「待つ」ということです。
「福祉」という言葉を聞くと、「相手のために、何かをしてあげること」と受け取られるかもしれません。大学で学んでいた時、私もそう思っていました。
ですが、実際はそうでもありません。

たとえば、自宅に知らない人が突然入ってきたら、あなたはどう思うでしょうか?
あなたが「怖い」と感じるように、利用者の方も自分の世界に突然慣れない人が現れたら「怖い」と思うのです。

ですので、利用者の方が自分の存在に慣れてもらうためにまずは、ただその人の隣に座ることにし、相手が慣れて、コミュニケーションがとれるタイミングを「待つ」ようにしています。

つい「利用者の方のために!」と思って先回りして行動しても、利用者の方が苦痛だと感じたら気持ちは離れていってしまいます。だからこそ「待つ」というのも、私たちの重要な仕事だと思っています。

ですがこれは、私一人だけでできることではありません。
利用者の方が施設や職員に慣れるまではみんなで「待つ」ことが重要です。
そのため、連絡ノートや会議の場で職員全体で共有し合い、職員みんなで共通認識を持ちながら「待つ」ことに取り組んでいます。

ご利用者様の介助をする塚本さんの写真

その人らしい生活の実現のために

私は施設の利用者の方それぞれの、その人らしい生活を実現させたいと考えています。
そのためには、利用者の方の能力や個性を尊重し、それを最大限に引き出せる環境づくりが重要です。

たとえば、この方は食事では箸を使えるか、スプーンは使えるか、といった一つ一つの細かい動作にも着目しながら、「今、何ができて、何が難しいのか」を職員全員で見極めます。
利用者の方ができることをやってしまったら、その人が持つ能力を発揮できない状態になってしまうからです。
そうならないために、相手が何を思っているのかを目線や視線、体の向きなどの細かい動きから読み取り、職員同士で仮説立てしながら的確な支援を考えます。利用者の方がその人らしく、「楽しい!」と思って過ごせる環境をつくれるように日々模索しています。

塚本さんの正面写真

今回のドキュメントはいかがでしたか?
次回、第10回は塚本さんのドキュメント「働く職場づくり編」をお届けします。
現場職員が考える、働きやすい職場づくりに迫ります。
お楽しみに!

今回紹介した法人・事業所

社会福祉法人にじの会
大沢にじの里(入所)

「にじの会」についてもっと知りたい方はこちら

法人WEBサイト
https://www.nijinokai.org/index.html(外部リンク)

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ふくむすび(東京都福祉人材情報バンクシステム)
社会福祉法人にじの会 大沢にじの里