目次
- 障害者週間と身近な福祉
- 障害の種類について
- 自己実現のためのサービス
- 法律にこめられる想い
- 次回予告
- おすすめ!ふくむすびコンテンツ
1.障害者週間と身近な福祉

毎年12月3日~9日は『障害者週間』です。
12月9日は、1975年に「障害者の権利宣言」が国連で採択された日です。
障害者基本法では、毎年12月3日から9日までを「障害者週間」と定めています。
第1回コラムでは、「“身近な福祉”を考える」をテーマに、次の4つについてイラストを参考にお届けしました。
(1)障害者とは「何らかの原因・障害によって日常生活または社会生活に影響の出るような制限を受けている人や、社会生活で不便さがある人」のこと
(2)しかし、「環境を整え、周囲の人が理解を深める」ことにより、生活の不便さを減らすことができること
(3)「環境を整える」ことの具体例として、公共設備や日用品などの『バリアフリー』や『ユニバーサルデザイン』の考え方を紹介
(4)わたしたちは日常的に福祉にかかわっており、障害者福祉にかかわるために、専門知識や資格は必須ではないこと
福祉は特別な存在ではなく、障害の有無に関係なく誰もが福祉の恩恵を受けながら生活していることを、おわかりいただけたでしょうか。
さて、今回は障害者福祉をより具体的に理解いただけるよう、“障害の種類や支援施設・サービス内容”等を紹介します。
2.障害の種類について

ここ数年、ADHD(注意欠如・多動性障害)や自閉症スペクトラム障害などの発達障害や、うつ病などの精神障害が、各種メディアで取り上げられる機会が多くなっています。また、ALSという重い難病の方が国会議員になるなど障害者の社会参加が進み、障害というキーワードを日常的に耳にすることが増えたのではないでしょうか。
しかし、ひと言で“障害”と言っても様々で、障害者一人ひとりの特性により、必要な配慮は異なります。2020年は、コロナ禍で今までとは違う視点での配慮が必要になることがわかりました。行動することはもちろん、まずは正しく知り理解を深めることが大切です。
外部リンク:東京都福祉局「障害者への合理的配慮等に関する事例集 感染症対策編」(外部リンク)
障害者の状況
障害者基本法(第二条、一)において、
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
と、定められているように、障害は主に以下の3つに分類されています。
- 身体障害
- 知的障害
- 精神障害(発達障害を含む)
また、「障害者総合支援法」では上記に追加して、難病患者の方も含まれています。
それぞれの障害の種類は下の表をご覧ください。
障害の種類
障害者(18歳以上) | 根拠法 | |
---|---|---|
身体障害者 | 身体に障害がある18歳以上で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人 | 身体障害者福祉法 |
知的障害者 | 知的機能の障害がみられる18歳以上の人 | 知的障害者福祉法 |
精神障害者 | 精神疾患(統合失調症、高次脳機能障害、てんかん、薬物やアルコールによる急性中毒あるいは依存症など)がある18歳以上の人 | 精神保健福祉法 |
発達障害者 | 自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など脳の機能に障害があり、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人 | 発達障害者支援法 |
難病患者 | 治療法が未確立な疾病その他特殊な疾病であって厚生労働大臣が定める一定程度の障害がある18歳以上の人 | 障害者総合支援法 |
参考文献:社会福祉法人東京都社会福祉協議会出版「障害者総合支援法とは…」
それでは日本には、一体どのくらい障害者の方がいるのでしょうか?

参考文献:社会福祉法人東京都社会福祉協議会出版「障害者総合支援法とは…」(外部リンク)
この数字を見て、どのように受け止められるでしょうか?思ったよりも多いでしょうか?それとも少ないでしょうか?
図1は、厚生労働省の調査に基づく人数(推計値)ですが、実は、障害者の方、また障害があることにより困っている方がどれくらいいるのか、把握することはとても難しいのです。
「どうして難しいの?」
そう疑問に思われた方へ、2つの観点から説明します。
障害者の範囲
障害者の方が、公的サービスを受けるために取得される障害者手帳は、みなさんも耳にしたことがあるかと思います。この手帳は、障害者ご本人やご家族の申請により、医師の診察等により障害の認定を受けて交付されます。ただし、障害があり生活に不自由があっても障害者手帳が交付されていない方もいるため、どのくらいの方が障害があるのか把握することが難しいのです。
また、図1のように、「身体障害と知的障害」、「知的障害と精神障害」というように、障害が重複する方もいます。
外見だけではわからない障害も
普段、「電車に乗ったり街中を歩いたりしていて、近くに障害者の方がいたのに気づかなかった」という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
障害の状況によっては、その特徴や特性が目に見えて分からないこともあるため、周囲に理解されづらい部分があります。
たとえば、「義足や人工関節を使用している方」、「内部障害や難病の方」など、外見からわからなくても援助や配慮を必要としている方々がいます。
それらをすこしでも解消するために、可視化や意思表示の手段として、ヘルプマークなどがありますので、外出される際にはぜひ意識してみてください。

実際は、障害者手帳をお持ちでない方も障害福祉サービスを受けることが可能です。
次の章では、その内容について紹介します。
3.自己実現のためのサービス

ここまで、障害の種類やそれぞれの特性について紹介しましたが、この章では、障害の状態に応じて受けられるサービス内容を紹介します。
下の表は、「障害者総合支援法」に定める障害福祉サービスの一覧です。障害の状態に応じて「障害支援区分(6段階)」が判定され、区分に応じて必要なサービスが受けられる仕組みとなっています。

サービスの内容は、入浴や排せつ、食事といった生活に必要不可欠なものから、自立や就労等の訓練を行うもの、また、移動や外出など社会参加を支援するものなど様々です。ご本人の障害の特性や望むライフスタイルに合わせて、受けたい障害福祉サービスを調整することになります。また、施設だけでなく、自宅で受けられるサービスも数多く存在します。
このようなサービスは、障害の状態や程度にかかわらず日常生活や社会生活を快適に送るために不可欠であり、一人ひとりの意思を尊重し自己実現するための基盤となるものです。
4.法律にこめられる想い

障害者福祉をとりまく法制度は、目まぐるしく変わっています。
今回紹介した「障害者基本法」や「障害者総合支援法」のほかにも、「障害者虐待防止法」や「障害者差別解消法」など、時代の流れとともに新しい法律が制定されています。
様々な法律が整備された背景には、障害者ご本人やそのご家族、関係団体が行政に対し様々な要望を行い、当事者の意見を反映させ、福祉の充実を図ってきた経緯があり、そこには「障害の状況や程度に関係なく、誰もが自分らしく、この先も安心して暮らせるように」という想いが込められています。
しかし、社会には障害に対する認識のズレや、知らず知らずのうちに生まれてしまった溝はまだまだあり、それが原因となって発生する事故や事件が後を絶ちません。
障害があることが問題なのではなく、障害があることで暮らしにくくなっている社会(世の中)の在り方が問題と言えるのではないでしょうか。
“福祉”という漢字が意味する「しあわせ」や「さいわい」が表すように、障害の有無にかかわらず、すべての人が幸せに暮らすことができるよう、法整備や仕組みをつくる行政、サービスを提供する福祉事業者、ボランティアスタッフなど、今日も“福祉”を支える人たちがいます。
5.次回予告
今回は“障害の種類とサービス内容”をお送りしましたが、次回はサービスを提供する側に焦点をあてて、「障害者支援の仕事内容」をテーマに来年1月にお届け予定です。
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6.おすすめ!ふくむすびコンテンツ
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