「その人らしい生活」を地域の中で


今井 祐希さん
世話人兼ショートステイ担当
社会福祉法人ひらいルミナル遊牧舎(3年目)
「この仕事をしていると、自分の持つ価値観ばかりに当てはめて考えないことや、最初から諦めないことの大切さを感じます。」と話す今井さん。常に新しい情報や制度を地域・関係機関から収集し、自身のスキルや経験値を上げることを心がけています。それは、ご利用者の方が希望する生活を考え、自分の意思で選ぶ機会を得られるように、それぞれの方が持つ「その人らしさ」を一番大切に考えて仕事に向き合っているからこそ。その思いの根底には、自身もお世話になった「福祉」に携わり、支援を必要とする人たちと共により良い地域や生活を築いていきたいという今井さんの強い気持ちがあります。
(取材:2024年11月)

現在、グループホームを利用している方の世話人と、ショートステイ事業の窓口を兼任されていますが、それぞれの業務について具体的に教えてください。
【世話人として】世話人業務では、掃除や買い物といった利用者の方の家事のお手伝いのほか、部屋への訪問を通じた対話や支援計画の作成、各種関係機関との連絡・調整、地域住民との交流を通したパイプ役などを担っており、利用者の方が地域の中でより豊かな生活ができるよう支えています。
【ショートステイ事業の窓口として】ショートステイを利用したい方の電話対応や見学対応、泊まりに来る際のスケジュール調整を行っています。地域移行支援(注)を利用して病院から体験宿泊を行う方もいらっしゃるので、世話人業務同様、各種関係機関との調整や情報共有に漏れがないよう常に意識しているほか、ショートステイというサービスがもっと広く普及するよう啓発活動も行っています。
(注)地域移行支援:障害者支援施設等や精神科病院に入所・入院している障害のある方に対して、住居の確保や障害福祉サービスの体験利用・体験宿泊のサポートなど、地域生活へ移行するための支援を行う事業。
この仕事や職場を知ったきっかけや、目指した理由を教えてください。
中~高校生時代に、定期的に精神保健福祉士の方と関わる機会があったことが、きっかけの一つです。福祉学科がある大学に進学したことも福祉の仕事に就く大きな後押しになりました。大学時代は児童福祉にも興味があり、児童ボランティアサークルや学童でのバイトなどを行いましたが、最終的には過去に自分がお世話になった方のように精神保健福祉士として人を支える仕事がしたいと思い、現在の仕事につながりました。遊牧舎には、大学4年生の時に精神保健福祉士の実習に来たのが最初です。地域に根付いた法人の体制や一人ひとりの利用者に密に関わって支援の方法を模索している職員の姿勢を間近で感じ、ここで働いてみたいと強く思いました。

精神保健福祉士や社会福祉士の資格を取得するのに、どのような勉強をされましたか?
大学のカリキュラムに組み込まれていた試験対策の講義で基礎的な部分は固めていました。試験が近づいてからは、試験対策を行う動画チャンネルを移動時間や隙間時間に繰り返し視聴し、細かな部分や全体の流れを補完しました。動画での勉強は、聴覚からの情報もあり場所を選ばす行うことができたため、とても記憶に残りやすかったです。資格取得に向けて勉強している方にはおすすめの方法です。
現在の仕事の中で、大切に考えていることや力を入れていることを教えてください。
支援に携わる時には「その人らしさ」を損なわないようにすることを一番大切にしています。私は、地域生活の在り方は人それぞれに特色があっていいと思いますし、生きている中で様々な選択を自分自身でするからこそ、学びや気付きを得てその人なりの彩りが生活に現れると思っています。そのため、一般的な意味での「良い生活」や自分の正しさを押し付けるのではなく、支援や社会資源をあくまで選択肢として提示した上で、それぞれの人の選んだものや希望することを中心に、一緒に理想とする生活を作り上げていくことを意識しています。

これまでの仕事の中で、心に残っている出来事はありますか?
「地域で暮らすことが難しい」と思われていた方々が、今では地域に溶け込んでその人らしい生活をしているという話を聞くと、支援者として、利用者の方の可能性の大きさというものを強く感じさせられます。「課題があるから〜〜ができない」と考えるのでなく、「課題を解決するために必要な取組・発信は何なのか」を自分ごととして捉えて地域づくりを進めることの重要性や、利用者の方の課題や問題の原因を大きく包括的にとらえる視点の大切さをこれらのケースから学びました。
これから、福祉の仕事を目指す人へメッセージを。
福祉の現場はチーム支援が要です。例えば野球でいう大谷翔平選手のようなスーパーマンが現場にいたとしても、一人でできることにはどうしても限りがあります。一方で、利用者のことを考える気持ちさえあれば、誰もがチームの一員となり、支援の可能性を無限大にしていくことが可能です。また、誰もが住みやすい地域・制度づくりを行っていくためにはより多くの人が一つのチームになる必要があります。この先、誰にとっても暮らしやすい地域づくりをしていく中で、皆さんと同じチームで働ける日を楽しみにしています。

