山根 智さん

サービス提供責任者(株式会社ケアメイト)
長く家業の製氷業を営んでいた山根さん。50代を前に事業撤退を決断し、全く新しい世界へと飛び込みました。資格を取得し、訪問ヘルパーからサービス提供責任者へ。そして今は、地域に暮らす人々を支える存在として活躍しています。
「他人のためにやることが、結局は自分の生き方に返ってくる」――そう語る山根さんの歩みは、セカンドキャリアを考える誰にとっても心に残るはずです。
(取材:2025年9月)取材撮影のため、マスクを外しています。

製氷業からの転身、50代を前にした決断
都内で家業の製氷業を営んできましたが、事業の継続を断念する決断を下しました。転機を迎えたのは50代を目前に控えた頃です。「年齢を重ねるほどに転職はどんどん狭き門になる。体力もあり、動けるうちに。」と考えたことが、第二のキャリアへ踏み出すきっかけになったといいます。介護福祉士の資格を取得し、現在は株式会社ケアメイトでサービス提供責任者(注)として活躍しています。
研修時に出会った聴覚障害のある仲間がケアメイトで働いていたことも背中を押し、「理解のある会社で働きたい。」と就職を決めたといいます。
(注)訪問介護事業所でご利用者様とヘルパーをつなぎ、介護サービスの計画や調整を行う管理者です。サービス提供責任者について見る
国家資格を目指し、介護の道へ
新たな道として選んだのは介護の分野。初任者研修を経て、介護福祉士の資格も取得しました。資格を持つことで、経験と知識がキャリアとして形になることに魅力を感じたといいます。
「国家資格を持ってキャリアを築ける仕事をしたかったのです。『士』とつく仕事は、資格を取得して経験を重ねることでキャリアを積み上げられる。だから介護福祉士を目指しました。」と山根さんは語ります。



訪問ヘルパーからサービス提供責任者へ
長く続けることを考え、夜勤は体力的に難しいと判断。訪問ヘルパーとしてキャリアをスタートさせました。2年間の経験を積み、実務者研修を経てサービス提供責任者へと進みました。
「最初はご利用者様の生活に入っていくことに緊張もありました。でも、『助かったよ』『ありがとう』と言ってもらえた時の嬉しさは大きかったです。今はヘルパーの傍ら、ヘルパーとご利用者様をつなぐ役割を担っています。」
新しい世界に踏み出して、見えてきた社会の姿
現場に立ち、まず感じたのは驚きだったそうです。
「こんなに多くの人が生活に困っているなんて思いませんでした。自分もこの地域で育ったので、恩返しをしたいという思いもあります。福祉の仕事を通じて、社会問題や人々の暮らしを自分の目で知るようになりました。同じ社会に生きていても、人は立場や役割が変わると、見える世界も変わるのです。」
他人の生活に寄り添うことが、結果的に自分自身の生き方を見直すきっかけにもなったといいます。
「他人のためにやることが、結局は自分の人生に返ってくる。その実感があります。」



真面目で紳士的―周囲からの信頼
同僚や上司からの評価は一様に「とにかく真面目で紳士的」。
「背が高いので、ご利用者さんに威圧感を与えないよう、あえて腰を低くして接するように心がけています。」と山根さんは話します。その姿勢はご利用者様からも安心感につながり、信頼を集めています。
あるご利用者様はこう話します。
「山根さんが来てくれると、とても落ち着きます。言葉づかいも丁寧で、こちらの気持ちを汲み取ってくれる。長く通ってきてくれているし安心して任せられる人ですね。」

福祉の仕事を考えている人へ
最後に、これから福祉の仕事に挑戦しようと考えている人へのメッセージを伺いました。
「福祉の仕事は、毎日に学びがある仕事です。生きる上で何が大切かを知ることができますし、ご利用者様の多様な生き方に触れることもできます。キャリアを積みながら、人との関わりを深められる。もし迷っているなら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。」
山根さんの歩みと挑戦は、これからの人生をどう生きるか考えている方に、大きなヒントを与えてくれます。